かとう鍼灸治療院

        
           酒田市亀ヶ崎3丁目10-29
      TEL (0234) 26-2057
 
          <鍼灸の知識・最新学説>
          鍼施術の実際



鍼施術の実際
     

 

 鍼施術をするにあたっては、まず問診を行います。また、望診といって症状が出ているところをよく観察します。症状が出ているところは、観察するとつやがあまりなかったり、左右の筋肉の高さがちがったり、乾燥あるいは湿っていたりすることが多いようです。

 また、聞診といって、体臭や声も証といってその人の臓腑や経絡の虚実状態を決める参考にします。経絡とは、身体を縦横に走る幹線の事です。経穴(いわゆるツボ)を繋げているだけでなく、気、血、津液(リンパ液など)が流れる道でもあります。気とはひと言で言えばエネルギーのことです。親からもらった生命のエネルギー、飲食物から吸収したエネルギー、清気といって空気中の酸素の3つから成ります。

 次に切診(実際に経絡経穴や、脈、お腹、背中を触って確かめる)をします。問題が有る場合、硬結(こり固まっている部分)や陥凹(沈み込んでいる部分)があったり、力がなかったり、ちょっと押しただけで痛みを発したりして、なんらかの反応が出ています。ちなみに、押すと気持ちがいいのは、虚証で、拒むのは実証です。それらには、内臓の異常であったり、不良姿勢による筋肉の過緊張、筋肉の使いすぎ、仕事のストレスなど、さまざまな原因が関係しています。

 そうした反応の出ている場所は、経穴に一致する場合がほとんどで、そういう場所は反応点であり鍼を刺すポイントでもあります(標治法)。また反応がでている局所だけでなく、鍼灸特有の診断体系を用いた証を立てての選穴も併せてします(本治法)。

 さて、人が様々な病証になる大本には、五臓のいずれかのエネルギーのバランスがくずれている、あるいは欠如していることが原因であると考えられます。そこには、五臓の精気の虚(生命力、抵抗力が弱った状態)が根本としてあります。また、人により原因は様々ですが、その正気の虚に乗じた風・寒・署・湿・燥・火の外邪の侵入(外因)や、怒・喜・思・憂・悲・驚・恐の七情の乱れ(内因)が関係しています。

 その他にも不内外因といって、労働による肉体的・精神的な疲れである労倦や、飲食の乱れ{五味とよばれる酸・苦・甘・辛・鹹(かん:塩からい味)の過不足、食べすぎ、飢餓、食中毒など}、外傷や手術の後遺症、房事過度という性交渉の過剰(不足も原因となる場合がある)などが影響します。そうなると、五臓の気・血・津液の虚または病理の虚(気・血・津液が消耗された状態)となり、さらに病状が進むと、陰陽の虚実による寒熱の病証をあらわします。

 これらに対して視診をしたり(望診)、声や体臭から診察したり(聞診)、問うて診察したり(問診)、触診をしたり(切診)、脈を診たり(脈診)、お腹を診たり(腹診)、舌を診たりして(舌診)、臓腑・経絡の虚実を診たうえで、その人の証に応じた配穴を用いて補法や瀉法の治療を行います。補法とは正気を補う手法で、瀉法とは邪気を出させる手法です。

 具体的に言うと、補法と瀉法では用いる経絡・経穴の違いや、患者さんが息を吸い込むときに刺し吐くとき抜くか、また吐くときに刺し吸うとき抜くかの違いや刺入の方向、深さ、速さの違いや、刺入前後にその部位を揉むかどうかや、刺入後に竜頭を弾くかどうかや、抜鍼後に鍼孔を閉じるかどうか等の違いがあります。また実際の治療では、必要な場合は旋撚術(鍼を左右にひねりながら入れる方法)や、雀啄術(雀がついばむように上下に鍼を動かす方法)など様々なテクニックを使いながら行います。鍼は注射針とは違い、中が空洞にはなっておらず、髪の毛程度の太さなので、刺した時の痛みはほとんどありません。鍼の響き(得気)と言ってズシーンと重だるい感じはあると思いますが、それは鍼の効果の現れとされていますので、当院では重要視しています。

     [参考文献] 日本鍼灸医学[基礎編] P28.P93.P108 経絡治療学会

                          

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