かとう鍼灸治療院

        
         酒田市亀ヶ崎3丁目10-29
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   <鍼灸の古典>
   陰陽五行説
                   

まず、鍼灸の成り立ちや陰陽五行説について説明したいと思います。
 古代中国において起こった治療法で、漢方薬、推拿(按摩)、気功とともに東洋医学の一部です。西暦紀元前後に成立した、黄帝内経(黄帝内経素問、黄帝内経霊枢)、傷寒雑病論(傷寒論、金匱要略)、神農本草経の3つが現存する最古の古典となっていますが、今でも鍼灸理論の中核となっています。その中には、陰陽五行説や経絡経穴学説といった、鍼灸とは切っても切れない学説がすでに書かれています。

陰陽五行説とは?

 陰陽五行説と一口に言いますが、これらは本来発生的には、別々のものが2つ合わさってできたものと考えられています。それは、易経で大成された陰陽論と洪範による書経の五行説を、戦国末に鄒衍(すうえん)が合体させたことによって成立した自然哲学であるといえます。

陰陽論について

 陰陽論とは、この世に存在するすべてのものは対立するものとして、陰と陽に分類できるとした考え方です。例えば明が陽で暗が陰であるとか、男が陽で女が陰に分類できます。また、陰陽は対立するものとして固定してばかりいるものではなく、変化するものとしても考えられています。陰はいつまでも陰であるのではなく、同様に陽はいつまでも陽であるのではないのです。例えば、男の子は女の子に対しては陽ですが、子として親に対すれば陰となるのです。また、陽は、活動、表現など発展するエネルギーですが、偏りすぎると衰えてしまいます。これを救うのは、順静、統一、調節の作用をする陰のエネルギーです。この陰陽が互いに和して制御しあうことで、はじめて永続性をもつのです。

古代中国人は、陰陽論を人体にも応用

 古代中国人は、この陰陽論を人体にも応用させました。現在においても五臓六腑や、気血の流れ道となっている12の経絡の相関関係、病理変化、診断、治療のあらゆる分野で、陰陽の概念は用いられています。陰陽の概念なしには鍼灸医学が正しく存在しえないと言えるほどです。また、自然における陰陽と同じように、人体においでも陰陽二気の交錯によって人体は成立するとされています。しかし、健康な人体は陰でも陽でもありません。陽気または陰気が一方より強すぎると、病気が起こると考えられています。

人体では体表は陽で体内は陰

 また、人体の部位について言うと、体表は陽で体内は陰ですが、体表の各部位同士で比べると、背面(四つん這いで太陽が上から照らして光りが当たる面)が陽で腹面が陰となり、人体においても陰陽は変化するものととらえられています。また、八綱理論という理論がありますが、表証、熱証、実証は陽証で、裏証、寒証、虚証は陰証と考えられており、陽証に対しての治療と陰証に対しての治療は、用いる経絡・経穴や手技が違ってきます。「虚」とは、正気(生命力や抵抗力)が不足した状態で、「実」とは、邪気といって風や寒などの人体に対して正気をゆがめ、病気を生じさせるように働く気が充満した状態です。虚証に対しては補法という手法が用いられ、実証に対しては瀉法という手法が用いられます。

五行説とは

 古代中国人は、存在する代表的な要素である木、火、土、金、水を選んで、それらを働かせるエネルギーを五気と考え、その作用を五行と称しこれを深く推究していきました。五行について最も大切なのは、相生、相剋関係と呼ばれるものです。木を焼けば火を生じ、火は灰、土を生じ、土は、金属を生じ、金属より水を生じ、水は木を成長させるというわけで、木生火、火生土、土生金、金生水、水生木と循環します。これに反して、木は、土を搾取して成長するので木剋土、同様にして、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木という関係が成立します。

まとめ <陰陽五行説は鍼灸医学にとって重要な理論>

 これらをまとめると五行説とは、人間生活となんらかの関連ある現象と物質を、木火土金水の五つの基本的要素に分類して、その相互関係を説明して解釈しようとする方法論であると言えます。古代中国人は、この世の中に起こり存在する諸事万端がこの五行に割り振られ、これらの相互作用、相互変化としてとらえようとしたものと思われます。当然の成り行きで医学の分野でも、長期にわたって蓄積された医学体験を五つの要素に分類することにより、生体の構築要素、生理機能、病理の説明、診断、治療、食物や環境状況の把握に応用してきたのです。
 陰陽説が単なる二象の相対であるのに対し、五行説は五象の循環性相対であると言えます。これらが1つにまとまったものが陰陽五行説とよばれ、鍼灸医学の根幹となっています。


 引用・参考文献 図説 東洋医学<基礎編>P10.P23〜P26 学研
                                       
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